新品フジゲン NST への、PLEK を活用した調整

おかげさまで日々たくさんの注文をいただいている、購入時に PLEK 調整が付き、しかもそのギターは PLEK がずっと無料の、新品お取寄せプラン
今日は、FGN(FUJIGEN) のストラトタイプ NST の例の紹介です。

ご注文いただいたのは、こちらのギター FGN NST20RAL。人気の Neo Classic シリーズの上位モデルですね。



チューニングはレギュラー、弦は10-46ゲージをご指定いただきました。
「新品に PLEK が必要なの?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、弦を張った(チューニングした)時のネックの反り方の個性は一本いっぽんさまざまですので、その個性に合わせてフレットを整えることで、鳴りをより良くできます。
また、弾き手が好む弦高やセッティングにおいて、理想のフレットバランスは変わりますので、そのお好みに合わせやすいバランスを作ることができます。

加えて、新品のデフォルトの状態は、ナットが高めになっていますので、ナットをフレットの R に合わせて調整することで、弾き心地もより良くできます。
もちろん、ブリッジ、サドルもお好みに合わせて最適なバランスにできますので、ご購入時にこのような調整を施せば、届いた瞬間から弾き手にとってベストな状態になっていると言えます。

話を NST に戻しましょう。

まずは、チューニングした状態でネック状態を測定し、可視化します。



こちらが、可視化したネック状態です。
2段になっていますが、上段が1弦部、下段が6弦部の断面図です。
画像見て左側がヘッド側。右側がボディ側です。

下部の灰色の部分が指板で、ネックの反りを表します。
ギザギザがフレットで、その上の数字(mm)がフレットの高さ。赤い折れ線がフレットの頂点を結んだ線です。
緑の曲線が、この弦のゲージとチューニングと弦高に対して理想的なフレットの頂点を結んだ線です。




もちろん新品ですので状態良好ですが、強いて言えば、ハイポジション側の指板が少し盛り上がっているように見えるかと思います。
これが、俗に言うハイ起きです。程度は軽いですが、少しその気があります。
「新品なのにハイ起き?」と思うかもしれませんが、ハイ起きは非常に良くある症状の一つです。
弦の張力がかかる木製品としては、新品でも、いたって普通のことと言えます。

また、上段の1弦部は、3フレットから10フレットにかけて、あるべき高さに対してフレットが低くなっているのも分かります。
ざっくり言えば、フレットの高低差は、音を詰まらせたり、鳴りを抑えてしまいます。

状態をまとめると、1弦のミドルポジションで音が詰まりやすく、全弦のハイポジションのフレットにも弦の振幅が当たってしまう状態と言えます。
(全弦のデータも見れるのですが、説明が長くなるので割愛します)

音詰まりの度合いも見てみましょう。



上の画像は、音詰まり(弦の振幅がフレットに当たってしまう)度合いを表したものです。
上から1弦〜6弦です。
ざっくり言えば、黄色い四角があるポジションは、弦の振幅がフレットに当たり、音が詰まったり鳴りが抑えられています。
先ほどのネック状態の図が表す通りのポジションに、それらの要素があるのが分かります。

それでは、ネックの反りの調整でどの程度改善できるのかと、トラスロッドの効きにどのような個性があるのかを見てみましょう。
できるだけハイ起き気を取り除きたいので、トラスロッドを少し締めてみます。



こちらが、少し締めた状態です。



上段が1弦部、下段が3弦部です。
1弦の方のハイ起き気は弱まり、ミドルポジションのギャップも少し埋まってくれていますが、3弦はまだハイ起き気がありますね。

この後、トラスロッドの効きを色々試した結果、上の画像ほどの反り具合が、一番バランスが取れていると判断しました。
ハイ起き気を抑えるにはトラスロッドをもっと締めればいいようにも思えるかもしれませんが、そうするとローポジションやミドルポジションが逆反ってきてしまいます。
全ポジションが同じように反ってくれることは稀なので、ネックの反りの調整は、ポジションごとのトレードオフとも言えます。

それでは、理想線に合わせてフレットを形成します。



こちらが、フレット形成後の3弦です。



ハイ起きの影響が綺麗に取り除かれ、全てのフレットの頂点が理想線(緑の曲線)に沿っていますね。
こうなることで、どのポジションを弾いても弦の振幅にフレットが干渉しなくなります。
つまりは、そのギターが最も鳴るフレットバランスになったということです。

フレット形成前後で見比べてみましょう。
上段が形成前、下段が形成後です。



前後で見比べると、理想線と実線とのギャップが無くなったのが分かりますね。

数値でも見てみましょう。



もともとあった、音詰まりを表す黄色い四角が全てなくなっていますね。

さて!フレットが整ったことで音を詰まらせたり鳴りを抑える要素が無くなりましたので、ここからが調整の本番です!

ナット、ブリッジ、サドルを調整し、鳴り良く弾き心地も良くしていきます。

まずは、ナットの状態を見てみましょう。



上の図が、ナットの状態を表しています。
左から右に向けて6弦から1弦の高さ(溝の深さ)を表します。
緑色の線が、弦のゲージとチューニングと弦高とフレット R に対する、理想の高さ(溝の深さ)で、赤い線が実際の高さ。その上の数字が理想と現状のギャップ(mm)を表します。

全体的に高く(溝が浅く)、R に対して沿っていないのが分かりますね。

あまり認知されていませんが、新品のデフォルトの状態は、ナットが高めになっていることが多いので、弦のゲージやチューニング、フレット R に合わせて高さを整える必要があります。

ナットは、弦高を構成する上での大事な支点ですので、高すぎると弦高の良い構成要素とは言えず、弾きにくさや鳴りの減少を生んでしまいます。
同じ弦高でも、ナットの状態により体感的な高さも変わってきます。

GLIDE でのナット調整は、実測値を参考にしながら、実際に弦を押さえた感触や、狙う弦高との兼ね合いの体感値を確認しながら行います。



ナットを適正な高さ(溝の深さ)に調整したら、次はトレモロユニットの調整です。
セッティングは「おまかせで」とご希望いただきましたので、一般的に好まれるセッティングに調整します。
デフォルトでは固めに締めてありましたので、チョーキングすると少しブリッジが浮くぐらいに緩めてあげます。
緩めた方が、ストラトらしい音質が引き立ってきます。



そして弦高をセットします。
こちらの NST20RAL の指板 R は、割とフラット寄りですので、モダン系に好まれる、少し低めの弦高にします。
1弦1.3mmから6弦1.7mm にセットしました。

話が戻りますが、冒頭のネック調整やフレット調整も、この弦高にセットするという前提の上で進めています。
もし元の状態のままこの弦高にセットしていたら、音が詰まりやすい箇所や鳴りが抑えられるポジションが多々あったことになります。



セッティングも終わりましたので、サウンドチェックです。
全ポジションがクリアに鳴るか、体感的に弾きやすく感じられるかをチェックしていきます。

実測値としては OK でも、体感的にも良いと感じられない時は、前の手順に戻って何度もやり直していきます。
工程の中でも、チェック作業に一番時間をかけます。
「これならお客様にお渡しできる」と納得できて初めて、完了とします。



以上、新品フジゲンのストラトキャスター・タイプ NST への PLEK を活用した例の紹介です。

このように、弦が張られた状態(チューニングした状態)でフレットを整え、デフォルト設定のパーツを適正値に調整することで、鳴り良く弾きやすく、ご自身にとって最適な状態で新品ギターを購入することができます。
しかも、新品お取寄せプランでは、この PLEK 調整が、ずっと無料で受けられます。



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