中古ギターを買う前に、状態を確認する上で踏まえる3点について

日頃の調整のご依頼で、お客様にご購入店から直送いただくことも多いですが、そのギターがリフレットするしかない状態だったということがよくあります。
お客様としては、もちろんそういった前提(認識)で買われていないのですが、ご購入店の商品ページの説明と実際の商品の状態に乖離があることは、珍しくないです。

そういったことを踏まえた上で、中古ギターを購入する際に、状態について確認するポイント3点と、購入店のスタッフさんに何と質問すればよいかについての解説動画です。

■フレットについて
■ネックの反りについて
■トラスロッドについて

■フレットについて
中古ギターの販売ページで、「フレット残り何割」という表記をよく目にしますが、この「何割」は、非常に曖昧な表現と言えます(乱暴な言い方で恐縮です)。
この「何割」という言葉は、「全フレットが」という前提がなければ成り立たないことになります。
フレットはご存じの通り、よく使う部分の方が消耗します。中古の場合、前ユーザー、もしくはその前のユーザーの方々の手癖で、消耗度が高いフレットが存在しているはずです。
全体的に見れば、例えば7割ほどは残っているように見えるかもしれませんが、一番消耗している部分は5割もないかもしれません。
一番減っている部分が何割かが重要と言えます。

またフレットは、状態において大事なのは実数値です。
フレット高には、調整でバランスを整えるために最低限は必要な数字(高さ)があります。
消耗によりその下限を下回っていますと、調整の余裕はなく、リフレットが必要となります。
例えば「7割」と書かれていても、それが0.5mmであれば、リフレットするしかない低さです。

加えてもう1点、これは、購入する側も把握しておく必要があるとも言えますが、元々の仕様のフレットの高さです。
例えば Fender の Stratocaster であれば、フレットがミディアム・ジャンボなのか、ビンテージ・タイプなのかで、新品時の高さは全然違います。
ビンテージ・タイプであれば、新品時で1mmを切っていることもありますので、それが「残り6割」という表記になっていれば、0.6mmしかないことになります。
0.6mm という数字も、リフレットが必要な低さです。
同じメーカーのギターでも、製品コンセプトによって使われているフレットが違うということもよくあります。
元々使われているフレットを知らければ、「残り何割」という言葉は、全く意味を成さないことになります。
近年はアコースティックメーカーでも、モデルやシリーズによってフレットを変えていることもあります。また、新品時の高さが0.7mmほどのものを採用しているメーカーさんもあります。
フレットも含めて仕様のバリエーションが増えるのは良いことだと思いますが、ユーザー側まであまり伝わっていない現実もあります。
メーカーさんの製品ページで、フレットの仕様も確認しておくとよいかと思います。

これらを踏まえて、購入店へのスタッフさんには、「一番低く見える(消耗して見える)フレットの実数値はいくらですか?」と質問するといいです。
デジタルのノギスを当てるだけのことですので、面倒と受け止められることはなく、快く対応してもらえるかと思います。


■ネックの反りについて
中古ギターの商品ページで定番の、「ネックはまっすぐ」という魔法の言葉があります。
こういった表記のネックは経験上、意図的に逆反らせて、何となくまっすぐっぽく見える状態にされていることが多いです。
よくあるのは、ハイ起きに対して強引に逆反らせているパターンです。もちろん、よい状態とは言えません。根本的にはハイ起きしていますので弦高は高く、中腹は逆反り過ぎていることでビビりやすくなっています。
ネックの反りは、理想的には適度に順反っていることです。弦の振幅に沿った適度な順反りが理想ではありませんが、綺麗に反ってくれるネックは稀です。
ハイ起き、ねじれ、部分的に強い順反り、逆反り、などなどの様々な個性が、ネック1本いっぽんにあります。
その性質に合わせて、適した調整を行う必要があります。
また、ネックの反りは、結果的にはネックアングルにも作用します。セットネックのものやアコースティックギターの場合、反りの影響が結果的に、アングルの強弱に作用します。
アングルに強弱の差があるのは普通とも言えますが、その度合いが強いと、弦高や音の聴こえ(ビビり、音詰まりなど)にも大きく作用します。

それらを踏まえて、購入店のスタッフさんには、このように質問するとよいかと思います。
「適度な順反りにセットしようとした際に、どのような反りの性質があるか?」
「反りが、ネックアングルの過剰な強弱に影響していないか?」


■トラスロッドについて
「トラスロッドあと何度回ります(例:あと90度回ります)」という表記もよく目にしますが、これもあまり意味のない言葉です。
トラスロッドで大事なのは、どれだけ「回る」かではなく、ネックの反りにどれだけ「作用する」かです。
これは、日常の様々なことで同じことが言えるかと思います。物事で大事なのは、何を「した」かではなく、それによって何が「生じた」かですね。
仮に、あと90度締められたとしても、反りにはさほど影響しないかもしれません。逆に、効きの良いものであれば、90度締めただけでもわりと逆反り側に動いてくれるかもしれません。
ご購入店から直送で当店に届くギターでも、確かに販売店さんが表記している分だけ回るには回りますが、反りにはさほど作用しないというギターも、よくあります。
また、そもそものネックの反りが強ければ、トラスロッド調整でもその反りの影響を抑えることはできません。どれだけ回せる余裕があっても難しいと言えます。

加えて一点、購入者が把握しておくべきとも言えますが、使われているトラスロッドの仕様です。
例えば、Fender に使われているようなビンテージ・タイプのトラスロッドであれば、そもそもの稼働幅が狭いです。
年代物の国産のギター(エレキ、アコースティック問わず)も、稼働幅が狭いです。
逆に、ダブル・アクションのものであれば、安心感があります。
近年はアコースティックでも、Martin や YAMAHA のようにダブル・アクションを採用しているメーカーが増えてきているのは、とてもありがたいです。

これらを踏まえて、購入店のスタッフさんには、このように質問するとよいかと思います。
「使われているトラスロッドの稼働幅は広いか狭いか?」
「締め切った/緩め切った際に、反りにどの程度効いてくれるか?」
「反りの性質に対して安心感があるか?」

これらについて、動画で解説しています。

 

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