ネックの反りの捉え方について

ギターのネックについて、これらの3点についての説明動画です。

■ネックの反りについて誤解されていること
■反りの捉え方、見方について
■反りは何に作用するのか

■ネックの反りについて誤解されていること
・ネックはまっすぐが良い
世間的には、ネックはまっすぐであるべきと誤解されがちですが、ネックの理想的な状態は、付け根からナットに向けて、適度に順反っていることです。
弦は、ナットとサドルが支点となり振幅します。その振幅に沿った適度な順反りが理想的ではありますが、「まっすぐが最適」と誤解されがちです。
まっすぐが良いという誤解から、トラスロッドを締め過ぎて逆反っているネックがよく見られます。

・反りの度合いと価格は関連する
「安いギターはネックが反りやすい」という認知が広まっていますが、価格と反りの度合いは、全く関連はないです。
日々、様々なメーカーの様々な状態のネックを見ていますが、価格と反り方の相関性は無いです。
「このギターは安いから反りが強いんだ」、「高いのに反りが強いなんて不良品だ」という言葉もよく聞きますが、価格の高さ低さと、反りの強弱には、何の相関もありません。
そもそも、価格が高くても低くても、根本的なネックの構造は変わりません。
また、ネックは木製品であり、弦の張力がかかります。木製品ゆえに、気候や湿度の影響も受けます。反りや形状変化が生じるのが普通と言えます。
安いから反りが強くなったと落胆する必要はなく、高いのに反りが強いなんて不良品だと心配する必要もないです。


反りの捉え方、見方について
ネックの反りは、ヘッド側から見る方がほとんどだと思います。
この見方が一般的ではありますが、ヘッド側からの視点だけで反りを見ると、その反り方を正しく解釈できないことがあります。
例えばハイ起きです。ハイ起きは、ヘッド側から見ると、付け根側が反り上がっているように見えます。このため、ハイポジションが強く順反る反り方と思われている方も多いです。
それ間違っているわけではないのですが、正しくは、付け根からますっぐで、ネックジョイント付近で「ぐっ」と強く順反るのがハイ起きです。付け根側からの視点が、正しい解釈となります。

ハイ起きは端的に言えば、ネックアングルが浅くなることと同じ反り方です。
ハイ起きとは逆に、アングルが強まる方への反り方もあります。その反り方をヘッド側から見た場合、最終フレット付近が下り坂のように見えます。
最終フレット付近が下がっていることは問題がないように思えるため、アングルへの影響を見落としてしまいます。

ヘッド側からの視点だけでネックを見ていると、アングルへの影響を見落とす、気付けないということになります。
Fender 系のボルトオン・ネックは別ではありますが、セットネックのエレキ、アコースティックギターなど、ボルトオン以外のネックは、ジョイント部でアングルが付けられています(厳密に言えば、ボルトオンでもアングルを加味して調整します)。
構造としてネックアングルが付けられていますため、調整も当然、アングルを踏まえて行う必要があります。
ネックを見るのはヘッド側からであっても、解釈としては付け根側からでなければ、アングルを踏まえずにギターを見るということになってしまいます。


■反りは何に作用するのか
大きくは2つあり、1つは弦の振幅。もう1つはネックアングルです。

・弦の振幅
これはイメージがしやすいですが、反りが適正でなければ弦の振幅にフレットが干渉しやすくなります。いわゆる、ビビりや音詰まりの原因となります。
もちろんフレットバランスの要素も大きいですが、まずは反りが、できるだけ干渉しにくくなっている必要があります。

・ネックアングル
これは結果的にではありますが、反りが変わる(反りを変える)ということは、ネックアングルが変わる(変える)ことと同じことになります。
例えばハイ起きは、ネックアングルが浅くなることと同じ反り方です。対照的に、付け根側からの逆反りは、ネックアングルが強くなることと同じです。
トラスロッドを回して反りを変えるということは、結果的にアングルをコントロールすることになると言っても大袈裟ではないです。
ネックアングルの重要性はあまり認識されていませんが、アングルの具合で、全体のバランスの兼ね合いは変わります。
弾き手がしっくりきていないギターは、ネック反りの強さや性質から、アングルが過剰に浅い/深いと同じ状態になっていることも多いです。

弦の振幅への影響だけでなく、アングルの影響も踏まえてネックを見る必要があります。


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