ナットとサドルの素材を変える前に、踏まえるべきポイント

「ナットやサドルの素材を変えたのに、しっくりこない、改善しない」という相談を受けることがよくありますが、素材を変える前に踏まえるべきポイントが2つあります。

1つ目は、ナットとサドルを変える前に全体のバランスを把握、調整すること。
2つ目は、ギターの共振による、弦の振幅への影響を把握することです。

「素材を変えたのにしっくりこない」という方のギターを見させていただくと、状態がアンバランスになっていることが多いです。
ネックの反りやフレットが未調整のままであったり、またネックアングルを踏まえないままで、結果的にナットとサドルが過剰に低すぎたり高すぎることが多いです。
また、ネックやフレットの状態の影響で、そもそも音がしっかり出ない状態になっているということも、本当によくあります。
そういった状態のままでは、素材を変えても意味がないと言えます。
あくまで全体のバランスを整えた上で、最後に吟味する要素と捉えていただくとよいかと思います。

ギターの共振の影響につきましては、ナットとサドルの素材を変えても、変えることはできません。
ギターは、弦エネルギーや特定の周波数に対してギター自体が共振し、それにより弦の振幅のうねりや減衰が生じます。
これは、厳密に言えばどのギターにも必ずあり、度合いや反応する音は、個体により様々です。
例えばボルトオン・ネックのエレキの場合、ウルフトーンのような音のうねりを感じられている方も多いですが、これも共振の影響です。
ネックが強く共振することで弦の振幅がうねり、音もうねります。
またアコースティックの場合は、デットポイントを感じられている方も多いです。特定の周波数に対してボディが強く共振することで弦の振幅が減衰し、音の伸びが弱く聴こえる現象です。

こういった共振の影響は、メーカーさんや販売店さんもあまり言及されませんため、存在自体もあまり認知されていません。そのため、ナットやサドルの影響で生じているのではないかと思われる方も多いです。
ではありますが、共振は、そのギターの素材や質量が伴う現象のため、パーツを変えても根本的に変えることはできません。
ナットやサドルを変えてみる前にまず、個体の共振の性質を認識する必要があると言えます。

こちらの動画で、それぞれについて説明しています。

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