ARIA PRO II MAC への、PLEK を活用した調整

おかげさまで日々多数のご依頼をいただいている PLEK を活用した調整。
今日は、ARIA PRO II MAC の例を紹介したいと思います。

ご依頼いただいたのは、こちらの ARIA PRO II MAC-45DL。



「中古で購入したが、音の詰まりが気になる。可能な限り弦高を低くしたい」というご要望です。

それではさっそくネック状態をスキャンして、音詰まりの原因を探ってみましょう。



こちらが、可視化されたネック状態です。
参考に、1弦と6弦部分です。



画像上部がネック1弦部の、下部が6弦部の断面図です。
画像左側がナット側。右側がブリッジ側です。
灰色の部分が指板で、ネックの反りを表します。ギザギザがフレットで、その上の数字(mm)がフレットの高さ。
赤い折れ線がフレットの頂点を結んだ線です。

この図から分かることが、1弦はネック中腹が逆反り気味で、かつ強めにハイ起きしています。
6弦はハイ起きはほぼありませんが、中腹が強く逆反っています。

ネックの反り方の影響でフレットバランスが乱れており、ミドルポジションは音が詰まりやすく、弦の振幅もだいぶ抑えられてしまっています。
加えて1弦はハイポジションは顕著に音が詰まる状態であることも分かります。

状態が分かりましたので、ネックの反りをできるだけ適正に近づけつつ、トラスロッドに対しどのように反りが変わる個性があるかも把握します。
まずは、逆反りを順反りに戻してあげてみましょう。



こちらが順反りに戻した状態です。



6弦の反りは良くなりましたが、1弦側は過剰にハイ起きしています。
適正な順反りにセットすると1弦側が強くハイ起きする個性があることが分かります。
また、フレットバランスにもかなりのガタつきがあることも分かります。
この状態でも、全体的に音が詰まりやすく、1弦ハイポジションは顕著に音が詰まります。

ハイ起き以外は理想に近いネックの反りなので、このままフレットを調整したいところではありますが、1弦ハイポジションのフレットを過剰に削らなければならないため、それは推奨できません。

ハイ起きを抑えつつ、しっかりフレットも調整できる状態にネックをセットします。



考察の結果、この反り具合が一番適正と判断しました。
ミドルポジションが真っ直ぐすぎるようにも見えますが、この程度であれば、フレットの頂点を結ぶラインで適正な順反りを描くことができます。
ハイ起きの度合いもここまで軽減できましたので、これであればフレットを調整できる範囲内です。

そして、フレット形成へと進みます。



各ポジションのフレットの高さと R をどのように整えるかを決めていきます。
ただフレットの凸凹を整えればいいというわけでなく、弦の振幅を考慮しながら設定していきます。
いくらフレットを綺麗に整えても、それが弦の振幅に干渉してしまっては意味がありません。
経験と知識をもとに、頭を使いながら設定していきます。

そしてこちらが、フレット形成後です。



ネック状態によるフレット高の乱れがなくなり、どのポジションでもキレイに鳴る状態へと改善しています。
弦の振幅に干渉する要素を全て取り除いている状態です。
6弦のハイポジションにフレットの凹凸がありますが、6弦のサドルの高さであれば振幅には干渉しません。

同じ1弦で見比べてみましょう。



上が元の状態で、下がフレット形成後です。
ネックの頂点を結ぶ線が、限りなく弦の振幅を干渉しない弧を描いています。
前後で見比べると、改善の度合いが分かりますね。

フレット形成が終わりましたので、次はセッティングです。

フロイドローズ系のロッキングトレモロではよくあることですが、各サドルの高さがフレット R に合っていませんでした。
スペーサーを挟み、バランスを整えます。



また今回は、フレットエッジのバリ取り処理もご希望でしたので、一本ずつバリをとっていきます。



フローティングをセットし、1弦を1mm と低い弦高にセットし、オクターブを整え完了です。



以上、ARIA PRO II MAC の、PLEK を活用した調整でした。
調整前よりも弦高は下げつつも、鳴りは格段に向上しています。
中古や新品で買ったらまず調整を依頼するという方も増えてきております。このように、自分好みのセッティングで気持ちよく楽しむためにも、PLEK を活用することは効果的です。

鳴りや弾き心地のお悩みを解決する、PLEK を活用した調整
https://glide-guitar.jp/pages/plek

 



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